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舞台「趣味の部屋」~何が本当で、何が嘘なのか?! [演劇の話]

 どーも、お久しぶりでございます。
 この間、ちょこっと更新しましたが、今日からきちんと復活します!!

 明けましておめでとうございます・・・という、間抜けな挨拶を、今頃、逢う友人知人関係にしてたりします。
 実は、年末に引いた風邪から喘息を併発しまして、二ヶ月ほど、ずーっと引きこもっていたのですな。
 「は? たかが喘息で?」と侮るなかれ。喘息持ちの方ならお解かりいただけると思いますが、咳の苦しみは相当なもので、24時間の中で咳をしていない時間を計ったら、果たして何時間あるんだろう? と思うくらい、常に咳が出続けている。寝ているときにも、時には呼吸が止まるんじゃないかと思うくらいの咳をする。アバラは日に日に痛くなり、折れてんじゃないか?と疑うほど。(実際、折れる人もいるそうですが)
 病院でクドクドと咳の辛さを訴え、咳止めの薬を強いものに変えてもらっても、即効性の効果はなし・・・。
 喘息は、一旦出てしまうと、処方された薬を飲み続けて、収束を待つしかないらしい。
 三月も半ばでようやく収まりがついたようで、今に至ります。

 で。
 二ヶ月間、ほとんど外にも遊びに行けず、映画も演劇も観られなかったわけですが(咳が周りの人に迷惑だからね)、つい先日、渋谷のパルコ劇場で、「趣味の部屋」を観てきました。

 実は、このチケット、プレゼントなんですな。
 ホワイトデーのお返し。

 去年の11月、私が書いた脚本「DOOR!」が、劇団摂河泉21さんと、演出家の東村先生によって、大阪で上演されたのですが、その後、血気盛んに次なる作品を書こうかと思いきや、気力を使い果たしたのか、風邪引いた挙句、喘息にまでなってしまうという、何とも不甲斐ナイていたらく・・・。
 まぁ、そういう状況を間近で見ていて、「良い舞台を観て今年もがんばれ」との意味を込めて、私が興味を持ちそうな舞台を探してくれたみたいです。(ま、当人が中井貴一好きというのもありますが・・・。私は、その演劇の話をされた際、まず聞いたのは「脚本、誰?」でした。どこに興味を持つかは、人それぞれですな)

 この舞台、「趣味の部屋」

 脚本は、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」、ドラマ「リーガルハイ」を書かれた、古沢良太氏。
 監督は、映画「世界の中心で愛を叫ぶ」、「北の零年」などの、行定勲氏。
 出演は、中井貴一氏、戸次重幸氏、原幹恵嬢、川平慈英氏、白井晃氏。
 
 一幕一場の舞台。
 一幕一場は、私の一番好きなスタイルの舞台。
 上演約二時間をノンストップ、リアルタイムで進むので、役者はみんな、ほとんど出ずっぱり、しゃべりっぱなしの、役者泣かせの舞台。
 しかもなになに・・・サスペンスコメディ?
 これは、期待できそう♪


 私も、自分が脚本を書く前は、ひとりの観客に過ぎなかった。
 観客のままでいるならば、好きな作品だけを観ていればいい。
 しかし、「一観客」から、「書く側」になる場合、考えることがある。
 それは「どんな作品が面白いか?」かもしれないが、面白さというのは、千差万別。
 コメディが好きな人もいれば、ホラーが好きな人もいる。感動できる話が好きな人もいれば、単に笑えるバカバカしい話が好きという人もいる。
 なので、自分が面白いと思ったことを貫くしかないと思う。
 だから、「一観客」という目線で、「どんな芝居が一番疲れないか?」と考えてみた。
 それは演劇のスタイル。
 一幕一場の舞台。
 役者は大変かも知れないが、このスタイルが一番観客が疲れず、尚且つ舞台に惹きつけられるのではないか? と、私は思っている。
 二時間ずっと観続ける方が疲れるのでは? と思うでしょうが、どんな舞台の中にも、観客を飽きさせず、惹きつける仕掛けがなされている。緊張を強いられるサスペンスでもミステリーでも、途中途中に息抜きを誘うシーンを挟み込んでいるものだ。観客は、舞台を観たくて劇場に来てるのだから、話にのめり込んでいる限り、疲れない。・・・と思う。
 もちろん、どうしても話の構成上、暗転したり、場面や時間軸などがコロコロ変わるものもある。
 しかし、暗転が多すぎると疲れるし、暗転した瞬間、集中力も途切れる。
 暗転は、舞台上の都合であり、観客の息抜きの時間ではないのだが、何となく暗転するとふっと集中力を途切れさせる自分がいたのは否めない。
 場面(や、時間軸)などが変わると、まず頭を整理して観なければ展開についていけない。頭の中で整理しながら観なきゃいけないので、イマイチ話にのめり込めない。
 もちろん演劇スタイルの好みもそれぞれだから、難しいものが好きな人もいろだろう。だが、暗転が長すぎると、客席でひそひそと声がするのは、集中力の途切れている証拠だ。
 書く側からすると、どんな芝居の中にでも、どこかひとつでも気に入ったシーンがあって欲しいし、共感する部分があって欲しいと願う。
 だからこそ、なるべく「疲れさせない芝居」を作ってみたい。
 エネルギーは、「観ること」、「何かを感じること」にだけ、注いでもらいたいと思うから。
 ・・・と。
 まぁ、私の意見はそれとして。
 舞台のお話を。

 チケットは全席指定なので、開場と同時に行くことはないのだが、私は映画でも舞台でも、開演ギリギリに駆けつけることはなるべくしない。
 席に落ち着いて、会場へ入ってくる客を観察する。
 客層を見ていると、どんな内容の芝居かもだいたいわかる。
 私は舞台を観る前に、パンフレットをめくることはしない。
 中身を知らずに観る方が好きなのだ。
 チラシには「サスペンスコメディ」と書いてあったが、サスペンスとコメディがどう融合するのか? 楽しみだ。

 客電がゆっくりと消え、場内が暗くなる。
 この瞬間が一番好き。
 ワクワクが最高潮に高まる期待感と、始まってしまえば二時間後には終わりを迎える寂しさ。
 この瞬間の相容れない複雑心理描写は、筆舌に尽くしがたい。


 さて。
 この舞台は、この後もまだまだ続くので、ネタバレは避けたい。
 なので、ネタバレはしませんが、詳しい内容はさておき、チラシに載ってる程度に軽く説明すると、「趣味の部屋」とは、その名の通り、「趣味をするため」だけに存在する、マンションの一室。
 その部屋の中で、男たちは、それぞれ自分の趣味に没頭する。
 しかし、その仲間のひとりが失踪したという情報から、仲間たちの心の中に「ある疑惑」が芽生え始め、予期しなかった意外な展開を見せ始める・・・。

 それぞれの趣味というのが、笑えるネタであり、かつ、伏線にもなっている。
 古沢氏は、本当に伏線の張りかたが上手い! 複雑に張り巡らされた伏線の糸を、ゆっくりと解いていく感覚は、この舞台を観なければ味わえない。
 観終わった後、ほんの少し、古いアメリカ映画、「デス・トラップ~死の罠」を思い出した。・・・と言えば、知ってる人には何となくネタバレになるかもしれません。

 もうひとつ、ヒントを。
 どんどん話にのめり込みながら、思い出したのは、人間の「3つの自分」というやつ。
 人間には、みっつの自分が存在するという。
 1つは、「自分の知ってる自分」
 2つ目は、「他人の知ってる自分」
 3つ目は。
 「自分も他人も知らない自分」

 1つ目と2つ目はわかる。
 だけと、3つ目は、自分でありながら、全く知らない自分が自分の中に同居するという不思議。葛藤。そして、恐怖。
 それは自分の中の別なる人格なのか? それとも直視したくないだけの真の欲望なのか?
 その3つ目の自分を知ってしまったら、何が本当で何が嘘なのか?! と、自問自答の日々が始まり、自分が自分である限り、死ぬまで終わらない。
 人間は、どんなに逃れたくても、「自分」からは決して逃げられないのだから。
 やはり、3つ目の自分は知らない方が幸せかもしれない・・・。

 ドラマや芝居でよく聞くセリフ、「他人は騙せても、自分は騙せない」というのがあるが、私はそう思わないんだな。
 例えば、暗示をかけるのなら、他人にかけるより、一心同体である自分にかける方が簡単そうだし、いやいや、もしかしたら、自分は騙されてないと思ってても、もうすでに、内なる「自分も他人も知らない自分」に騙されているかもしれないのだ。

 「何が本当で、何が嘘なのか?!」

 もし、この「趣味の部屋」を観たら、今一度、考え直すかもしれない。
 コメディの要素はたっぷりと含まれており、サスペンスの要素もある。しかも、これは上質のブラックジョークでもある。
 そして。
 最後の最後まで気を抜けないのが、この舞台。
 
 ラスト。
 主人公である、中井貴一氏が発するセリフにご注意。
 どんでん返しが、またまたどんでん返し? ・・・いや、それとも?!

 舞台を観た後に、きっとこう思うだろう。

 「何が本当で、何が嘘なのだ?!」

 もしかしたら、私もあなたも、この世に生きる人すべて、我知らず「自分も他人も知らない自分」に騙されているのかもしれませんね・・・。
 そう古沢氏に耳元で語りかけられたかのような、そんな上質の時間でした。




 舞台「趣味の部屋」は、


4月14日(日)まで         
東京公演~渋谷パルコ劇場

4月16日(火)           
福岡公演~福岡市民会館・大ホール

4月18日(木)~21日(日)   
大阪公演~森之宮ピロティホール

4月24日(水)
名古屋公演~旧名古屋市民会館・中ホール

4月26日(金)
長野公演~須坂市文化会館メセナホール・大ホール

4月29日(月祝)
札幌公演~札幌市民ホール
              

 何か千秋楽は、戸次重幸氏ファンで埋め尽くされそうですね^^;
 もしかしたら、敬愛するミスターが客席にいるのかも。うらやましいな。


 さてさて。
 とても良い舞台を観たら、やっぱり創作意欲が刺激されるものです。
 何か、とっても書きたい気分♪

 今年も何か舞台上演出来るような機会があればいいのですが、何せ営業が下手なので、依頼を待つしかない、貧乏な探偵事務所を開いているようなワタシ・・・。
 単なる「趣味」じゃなく「仕事」なら、営業も、もっともっと精進しなければね。
 がんばろ。

 


2013-04-13 01:48  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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