恋に、似ている。~私が照明を始めた理由~ [演劇の話]
こんばんは、猫たぬきです。
今年は気が向けばちょくちょく更新しておりますので、お久しぶりです、というフレーズはありませんね(笑)
さて。
先日の6月10日は、猫たぬきの誕生日&ブログ開設6周年記念日でございます。
6年を振り返ると、何にもなかったようで、いろんなことがありましたなぁ…。
アクセス数は、ありがたいことに300000アクセスを突破しましたし、更新していない日にも、誰かしら閲覧してくださっている。
私自身も、着付け教室に通ったり、映画を大量に観るようになったり…、しかし、一番大きな変化は、照明を始めたこと、かな。
東京の学校で勉強して、プロ脚本家さんのアシスタントを経て、静岡に居を移した今、脚本家として静岡でがんばろう!!…と、たぶん6年前には思っていたと思うのですよ、当時はね。もちろん、今でも「本業は脚本」だと思っていますが、ほんの2年ほど前から、照明に興味を持ち始めて、今では、どちらに力を入れているのかわからないくらい好きになっている。
最初に照明に恋をしたのは、2年前。
当時知り合いだった照明さんが担当する、演劇のゲネを見させてもらったときだった。
その照明さんは、登場人物がドアの向こうに消えて、ほんの少し遅れてライトを消した方が効果的なのでは?と提案した。
「残り香のような印象が残る」、と。
その時は結局、演出家の指示した今まで通りの照明で本番を迎えることになったのだが、私はその「残り香のような照明」が、忘れられなかった。
今はもうなくなってしまったが、数年前まで静岡に伽藍博物堂という演劇シアターがあった。
そこでは、毎年春に、いろんな劇団のユニット公演「春なのに」があった。
私が「みかん遊演団」で脚本を書いていた頃、出演させてもらったことがある。
裏方がいなかったので、私が照明担当することになった。照明…といっても、きっかけの明かりを点けたり、暗転したりという、簡単極まりないもので、当時の私は照明のことを、「単に登場人物の出入りきっかけのキュー的な役割と、段落の締めくくりの暗転でしかない」と思っていた…。
しかし、「残り香のような照明」発言で、私の照明に対する思いが180度変わった。
照明とは、確かに無くても成立するものかもしれないけれど、そこに世界観を持つことによって、観る人に深い想像力を提供出来る素晴らしいものなんだ、と気付いてしまった。
そう。「たかが照明、されど照明」なのだ。
何の意味もないと思えばそれまでだが、その灯りは、確かにそこに息づいている。その灯りに、もっともっと意味を込めてみたい。
そして、思った。
「私も照明をやってみたい!!」、と。
人がひとたび何かを本気でやってみたい、と思って、それを口に出してみたら、何故か傍にいる人たちに伝わるのか、そういう機会や場を与えてもらえる。
私にもありがたいことに、そういう奇特な人が傍にいて、素人照明を使ってもらえる場が出来た。
あまり音楽に興味のない私が音楽ライヴの照明を担当するのは如何なものか?と自分でも思うのだが、大掛かりな規模のコンサート会場と違って、小さな音楽ライヴに関しては、音が一番肝心で、照明は演奏者の顔が映ればそれで良し、的なところが多分にある。
その中で、演奏者や、演奏する音楽のカラーを考えて、空間に色を添える感じの控えめな照明で、修行させてもらう。
褒めてもらえると嬉しくて、またがんばろうと思うし、照明は楽しかった。
…が。
照明に恋して2年め。
とうとう、次のステップが訪れたようだ。
先日、6月8日から10日まで、怒涛の照明ラッシュだった。
毎日の睡眠時間が2時間を切ってる。そんな怒涛の三日間…。
8日は、お寺でクラシックコンサートのお手伝い。
この日は、他に照明さんがいたので、私は照明には関わらず、タイムキーパーとして、トランシーバー片手に右往左往しておりました。
9日は、上に記した音楽ライヴで照明を担当させてもらってるお店の20周年パーティー。
そして10日は、静岡の演劇シアター、アトリエみるめでの公演。パントマイムユニット「maimuima」による番外公演「だだだっ!!」の照明。
パントマイムは、豊かな表情と卓越した身体の動きで伝える、演劇のカテゴリーの一種。
音楽ライヴと違って、即興で照明を変えられるわけでなく、きちんとしたキューシートに則って作動させなくてはならない。ダンスの要素も多分に取り入れられてるから、動きも多い。その動きに合わせて照明を変えていかなくてはならない。もちろん、音響との呼吸、タイミング、演者との呼吸、タイミング、すべてを考慮しながら、だ。
それを、ほんの数時間で把握して、リハーサルして、本番なんて、本当に出来るのか?! いやいや、出来るのか?!と言ったって、代わりはいない。出来なくても、やらなきゃならないのだ。
もし、プロの照明さんだったら、こんなことは当たり前なのかもしれない。
「はじめまして」の状態から、キューシートを手渡されて、ほんの数時間で完璧にこなしてしまうのだろうけれど…。
朝から現場に入って、キューシート片手に照明を動かして、演者の用意が出来たら、通しで音響と照明を合わせてみる。
タイミングが合わなかったり、音響と微妙なズレがあったり。演者や演出の要求を上手く飲み込めなかったり…。お昼なんか食べてる余裕はない。キューシートとにらめっこしながら、パニックになりそうな自分を励まし、鼓舞し、音響のMちゃんに応援してもらい、何とか本番にこぎつけた。
しかし。
自分が思う通りのタイミングが取れない。微妙なズレがまだ残ってる。
ある演目では、照明がきちんと行き届いてなくて、演者の表情が隠れるところがあった。
演者を100%生かしきれない照明なんて、意味がない。
エンディングが終わり、暗転したあと、私の中に残ったのは、圧倒的な悔しさだった。
「もっと時間があったら」なんて、ただの言い訳で。
本当言うと、「悔しい」と思うことすら、傲慢な気がしてくる。
その程度の力しかないんだ。
自分の力なんて、まだまだなんだ。
それを認めないと、先へは進めない。
今までのような「楽しい」で終わる照明じゃなく、「悔しい」と思う気持ちは、照明に恋してから、初めて持った気がする。
照明も恋も同じ。
「楽しい」で終わる時期は過ぎた。
これからは、ケンカしたり、時には苦しくなるほど嫌な思いをしたり、そういう恋愛関係にも似た課程が待っている。
それでも好きなら、続けるしかない。
嫌になって別れるのか、好きと嫌いを繰り返しながら、続けていくのか。
それは、私の「照明に対する想い」次第だ。
そういえば。
昔、「脚本」でも、同じ思いをした気がする。
「楽しい」で書いてる時期は過ぎて、書くことが苦痛になりだした頃。
自分に問うのはいつも「じゃあ、もう二度と書かない。お話も考えない。それでいられるか?」ということ。
実際に書き始めるかどうかは別として、想像することは、すでに呼吸するように私の中で息づいている。頭の中で様々な登場人物が動き出し、セリフをしゃべる。
それはもう、私の一部であり、それをやめることは、呼吸することをやめることに通じるような気がしてる。
それほどに、私の中で「脚本」は大事なものになっている。
これはもう、恋ではなく、愛なんだろうな…。
それにしても私、何かを恋に例えるのが好きなんだな…。
いつも何かに恋してる気がする(笑)
さて。
怒涛の三日間が終わり、1日睡眠時間2時間弱という生活もひと段落。
恋してる「照明」とは、しばらくお別れして、これからは、愛してる「脚本」との生活が始まります。
今月末までに、脚本を一本、仕上げます!!
しばらくブログも書けませんが、猫たぬきは、6周年を迎えて、静岡で元気に生きてます。
「おめでとうメール」を下さった皆さま、このブログを読んでくださっている皆さまに感謝。
すべての皆さまにありがとう!!
共通テーマ:日記・雑感
誕生日と六周年記念おめでとうございます
by COLE (2012-06-17 01:21)
ご無沙汰しておりまして申し訳ございませんです~✩
私も半年ぶりに記事更新しました(^^;)
昔、THE ALFEEのコンサートスタッフさんが、
「ほんの少しでもタイミングがずれてしまうと、印象が変わる」
って言ってました。
そして、脚本!!
1度、猫たさんが脚本を書かれた劇を観てみたいです♪
by なっちん (2012-06-17 22:00)
ありがとうございます、COLEさん^^;
お返事、遅くなってすみません><
by 猫たぬき (2012-10-14 05:22)
こちらこそ、ご無沙汰で~す、なっちん^^;
そうなんですよ!! タイミングってホント大事で。
たかが照明、されど照明なんだよねぇ。
名のあるミュージシャンは、気心知れたスタッフでコンサート遠征に行く気持ちがわかるよ。あうんの呼吸をわかってくれてると、アドリブもしやすいんだろうね、きっと^^
久々に脚本の仕事しましたよ~。最新記事は、公演の告知です。
なっちんが大阪在住だったら絶対観に来て欲しいけどな^^;
by 猫たぬき (2012-10-14 05:25)
あすなろうさん、いつも記事を読んでくださってありがとうございます。
nice! ありがとうございます^^;
by 猫たぬき (2012-10-14 05:28)
こんばんは~。
凄いチャレンジ人生ですね~!
必至で、でも輝いている猫たぬきさんの
表情が瞼に浮かんできそうです。
大阪にそれも梅田にいらっしゃるのですね!
私も是非鑑賞させていただきたいのですが?
by あすなろう (2012-10-25 21:18)
こんばんは、あすなろうさん^^;
梅田ではなく難波ですが、大阪ですよ~(笑)
ぜひぜひ、ご鑑賞くださいませ!!
チケット販売及び予約は、上記の通り、澪クリエーションというところで承っておりますゆえ。お電話でお問い合わせください。
ぜひ、ご予約くださいませ^^;
上演中はワタクシも会場のどこかにいますので、受付で「猫たぬきはいますか?」と聞いていただければ、参上します。というか、多分ちょこまかした挙動不審なタヌキ顔の女を発見したら、それが私です(笑)
by 猫たぬき (2012-10-27 02:29)