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すべては「お客さま」のために。 [映画の話]

「前に言うてたことが、ネットニュースに出てるよ」と、殿が言った。

 それは、二週間ほど前のこと。
 赤坂サカス(←読んだときの響きが好き)に行ったとき、「イキガミ」の映画宣伝のパネルを見た。
 その中に書かれているストーリーを読んで、「これって、星新一の小説やんな~」と、私が言ったときのことだ。
 私は「イキガミ」が漫画の実写版映画とは知らず、星新一氏の小説の映画化だと思った。それを口にしただけのこと。ただ、それだけのことだったのだが……。
 世間では、もっと前からネット上では問題になっていたらしい。(遅いわっ!! と、自分ツッコミ。
まぁ、イキガミの漫画自体を知らなかったしね)
 ネットニュースでも取り上げられてるし、星新一氏の公式ホームページでは、期間限定で全文を掲載しているそうなので、興味のある方は、探してみてください。星新一氏の本を持っている方は、「生活維持省」という題を探してみても。
 何だか今日のブログタイトルが、どこかのサービス業の宣伝文句のようになってますが(笑) 
本日のお題、「誰がために映画は上映される?」です。

 私は、昔から星新一氏の小説を読んでいた。
 まだ小説を読み始めた頃で、長編小説をガッツリ読む気力も根性もなく、短いストーリーの方が面白いし、手軽に読めるという読者初心者の頃のこと。
 氏の小説の大部分はSFで、私にはよく理解出来ないものも多いけど(SFは苦手)、不思議話や近未来モノは好きだったので、結構覚えてる。「生活維持省」も、そのひとつ。話の中身はあえて書きませんが、氏の小説を知っている人間なら、確かに「イキガミ」と「生活維持省」は酷似しているかも、と思う。

 突然話が変わりますが、最近、シナリオの師匠のお言葉で心に響くものがありました。
 このブログでもお知らせしていました通り、先々月に静岡のライブバー・フリーキーショウの、
水曜いきまshowで、「グラス一杯の夢 Shot Ⅰ 分岐点」の公演を終えました。
 その公演を終えての私の感動は、「今ひとつ」だった。以前に師匠と共同で書かせていただいたキッズミュージカルほどの感動はなかった。
 そのことについて、このふた月、いろいろと考えていたのだけれど、師匠とのメールのやり取りの中に、「ハッ!!」とする文章があった。(すみません師匠、抜粋させていただきます)

「お芝居は、お客さんのためにあるのです。お客さんがOKなら、OKなのです。自分たちが満足出来なかったから、失敗だった、というのは、まだまだお客さんのためではなく、自分のために舞台をやっている、と言われても仕方のないことです」

 この言葉に、ガン!!っと頭を殴られたようなショックを受けたのです。(いい意味で)

 私は、「モノ書き」というよりも、「妄想家」と言うほうが正しいような人間で、頭の中でお話を考えてる時が、一番幸せ。でも、そのうち登場人物たちが目の前で動き出し始め、それをそのままシナリオにしたくなる。でも書き始めると、頭の中で考えた話と自分の筆力とのギャップで、考えた話以上に面白いシナリオは書けなかったりする。書いても「何か違う」と、いつも思う。
 しかし、本当に書かなくてはいけないのは「自分が満足するお話じゃなくて、観客が満足出来るお話なんだ」、ということ。

 私は、人生の中に「失敗」とか「無駄」なことは何もない、と思っている人間なので、今回の公演が失敗だとは思ってないけれど、やっぱり感動が薄いってことは、まだまだ「お客さん」よりも「自分の満足」を優先しているのかなぁ……と、反省しました。
 熱意はあるんだけど、空回りしてるという感じ? それじゃ、観客に「熱い思い」は伝わらない。
 すごい球を投げる投手は、試合には勝てるけど、キャッチボールは出来ない。
 剛速球を投げて、相手に受け取ってもらうことをせず、「どう? すごいでしょ?」と得意になっていては、キャッチボールにならない。相手が受けやすいところに、受けやすいスピードの球を投げることが、楽しいキャッチボールのルールなのだ。
 「熱い思い」を、台本で、芝居で、伝えるためには、「観客」にわかりやすいような手段で伝えなくてはならない。舞台は、哲学じゃないからね(笑)
 まず「観客」ありき、だということ。
 う~ん(--) さすが師匠、深いっ!! 

 全然関係のない話をしているとお思いでしょ? でもそれは早合点。ちゃんと繋がっていくんですよ、このお話。
 昔、師匠の教室に通っていた、まだ私が生徒だった頃。
 習作で書いたプロットが、某脚本家の書いた某ドラマに酷使している、と師匠に言われたことがあった。
 もちろん、私はそのドラマを見ていなかったし、何も知らなかったので「盗作」ではなく、自分の頭の中で考えたストーリーなのだが、このプロットでシナリオを書くことは出来ない。
 十人十色、人それぞれ考え方が違うとは言えど、似た発想を持つ人がこの世に居ても不思議じゃない。私と某脚本家とが同じ思考回路だったと言える。
 しかし、いくら私が「これは私が考えたオリジナルの話です!!」と主張したって、先に発表している作品がある(しかも著作権が有効である期間の)場合、それは「完全なオリジナル」ではなくなる。
 「知りませんでした」は、通じない。
 知っている他の観客が存在するのだから。
 そもそも、世間の小説も、映画もドラマのストーリーも、結局はシェイクスピアが書いた、喜怒哀楽すべての物語のどれかが下敷きにあるような気がする。もちろんシェイクスピアなら、著作権の期限も切れてるから、「これはロミオとジュリエットの脚色だな」と観る側にわかっても、何も問題はない。
 今回の問題は、星新一氏の小説に著作権がある、という点だ。 
 
 それにしても、こういうトラブルって多くない? ドラマも映画も。
 高視聴率だし、とても面白いのに、まったく再放送が出来ないドラマとか、DVD化されないとかっていうのは、何らかのトラブルが未解決のまま宙ぶらりんになってるって、聞いたことがある。
 この「イキガミ」の作者も、出版関係者も、「知らなかったんだから、関係ない」と言う前に、「盗作じゃないか?」というネット上での議論が持ち上がった時に、星新一氏の「生活維持省」を読んでみるべきではなかったか? と思う。
 読んだ読者が「似ている」と感じるのだから、やはりそれは「完全なオリジナル」ではないのだ。
 著作権が存在する場合、先に発表されたものがあるのなら、それがオリジナルなのであって、その後に似たものが発表された場合、盗作とは言わなくても、純粋な独創とは言えない。そこは認めるべきではなかったか。
 この映画「イキガミ」の監督も、役者も、映画に関わるすべての人間は、ただ「観客に喜んでもらえるものを」と、一生懸命作ったんだろうし、映画自体は、とても素晴らしいものかもしれないのに……。映画制作に携わった人たちすべてに対して、失礼な気がする。

 結局、このニュースは、「調べとけよっ!!」(←どうでしょうファンなら説明する必要はないですね? 大泉洋氏が、藤村Dに対して怒ったときのセリフのひとつ) ということに尽きる。
 映画化する、ということは、漫画を読んでいる人のみならず、全国に知れ渡るということ。
 星新一氏の読者が「イキガミ」の漫画を読んでなくても、映画化となれば、全国区にCMも流れるし、何らかの情報は入ってくる。そうなれば、「これってどうよ?」って話になることは、わかっていたはずじゃないのか?
 それより何より、漫画出版や映画制作に関わる大勢の人の中で、誰ひとりとして星新一氏の小説を知らなかったって、どうなのよ?って思いますが……。特に出版社の人たち。本でメシ食ってんじゃないの??? 知りませんでしたで許される? 読者の中で話題になる前に、誰かひとりくらい気付くはずじゃないか?
 説明を求めた星新一氏のご息女も、別に「盗作だ」と騒ぎ立てたいわけじゃないと思う。(私の一方的な見解ですが) ただ、父・星新一氏の作品が原案となっているようなものだし、そうなれば著作権の問題にもなる。(作者の死後50年間は、維持されるんじゃなかったかな?)、映画化する前に、何か一報あってもいいんじゃないの?ってことだと思う。
 つまりは、星新一氏の親族の知らないところで、漫画になって、映画化されて、ネットで「盗作疑惑」が出ているということに対して、どうなってるの?と質問しただけのことではないか、と。
 ネットニュースも、「何の問題もない」と突っぱねた答えに対して、星新一氏のご息女は、「判断はそれぞれの読者のみなさまにおまかせしたいと思います」と結んでいる。
 
 誰がために映画は作られるんだろう?
 それは映画を観に来てくれる「観客のため」に他ならない。
 良い話を、良い映画にしたのだったら、来てくれる観客のために、映画公演前に、こういったトラブルになるような事態は避けるべきではなかったのか?
 おそらく私はこの映画を観ないと思うけれど、映画の宣伝パネルでストーリーを読んだ感想で判断すれば、ラストは小説とは違っているだろう。
 しかし、私は星新一氏の小説のラストの方が心に響く。
 昔読んだ小説が、今でも心に残っているのが、その証拠である。


 それではお茶にいたしましょう。
 最近は、玄米茶に凝ってます(^^)旦
 羊羹や、繊細な上生菓子には、やはり煎茶が合いますが、つぶあんが詰まったアンパンとか、
鯛焼きとか、カステラとか、そんな「おやつ」感覚で食べるものには、熱湯でささっと淹れられる
「玄米茶」がいい。
 煎茶は、沸騰したお湯をやや冷ましてから淹れるのが通常ですが、玄米茶やほうじ茶などは、
沸騰した湯をアツアツそのまま茶葉を淹れた急須に注いで蓋をしましょう。
 湯のみに注ぐ時にフワっと、玄米の香りにホッと心が和みます。
 それではまた次回、お逢いしましょう……♪


2008-09-21 05:06  nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
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kumasu

こんばんは~!山に出没していたクマスです(笑)
海もいいけど山もいいですね~~♪
ところで、こういうのって難しいですよね。。なんだか考えれば考えるほど分からなくなりそうです(笑)
自分もベストなものがお客さんにウケルのが一番ベストなんでしょうが、お客さんがベストなら良し・・・なのかもしれないけど、やっぱり自分がベストなのがイイ!って私も単純に思ってしまいます。。
だから私の前やってたバンドはダメだったんですけどね~~(笑)
by kumasu (2008-09-24 21:56) 

猫たぬき

こんにちは~クマスさん(^^)ノ nice!ありがとー♪
そうそう、自分では完璧!!と思ってても、人から見たら「まぁまぁ」ってことがたくさんある(笑)
そういうときって結構ヘコむよね~!!(はるな愛風にどうぞ♪)
でもやっぱ「自分が納得したものを作りたい!!」っていうの、大事だと思うけど……そ、それでバンドダメになっちゃったの?!(驚)
でも、「クマスさんとバンド」っていうのが、あんまりイメージ出来ないんだ、実は(^^ゞ 一度ギター弾いてるとこ見てみたかったよ~。
by 猫たぬき (2008-10-01 16:37) 

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